今年読んだ本とか 2019年編

今年読んだ本たち

今年は31タイトルの本を読みました。もっと読んだ気がしてたけど、後述の十二国記のように4分冊本とか上下巻の本が多かったので、タイトル数だとこのような数に落ち着いた。

思えば昨年はTwitterでジャンルを指定して読む本を投票で決めるという主体性のかけらもない読書の仕方をしてたわけだけど、そうこうしていたら読みたい本がたくさんたまってきたのと、アンケートのコンテンツ力の低下を感じたので今年は思うがままに読んでみた。そうして読んだ結果、今年のランキングは以下のとおり。

bookmeter.com

正直1~6位くらいまではあんまり順位へのこだわりはないのだけど、記憶に残っていたりインパクトが大きいものが上位に来ている気がする。とりあえず何冊か紹介していく。

 

世界の中心で、愛をさけぶ / 片山恭一

平成最後に平成で一番売れた恋愛小説を読もうということで手に取った本。

読書メーターのこの本の書評を読むと「昔に流行った本らしいですね」とか「映画で見たことがあります」とか書いてあって、年齢を感じて少し愕然としてしまった。調べてみると320万部売れていたらしいが、確かに当時のブームはすさまじく、普段は全く本を読まない友人までも、どっかから借りてきたハードカバーを手に取って読んだりしていた気がする。当時は私も読んだけど、中学生にありがちなひねくれた発想で「まぁこんなもんか」という程度の感想を覚えたような記憶がある。

で、今回改めて読んだわけですけど、わりとドはまりした。柴咲コウの「かたちあるもの」を聞きまくったし、「本当に何にもわかってなかったな当時の自分!!周りの評価に流されたらあかんで!!!!」と過去の自分を叱りたくなった。

もし、私と同年代で当時と同じような感覚でこの本のことを「はいはい、泣ける本でしょ~主人公の彼女が死ぬんでしょ~」みたいな認識でいる人がいるならそれは本当にもったいないと思う。いやマジで。

確かに泣ける話ではあるんだけど、作者はどう考えても「よっしゃ、いっちょ悲しい展開で読者泣かせたりますか~」って感じで書いてるようには思えない。だいたい、主人公の彼女(亜紀)が死を迎えることは冒頭で書いてある。なんなら最初のシーンは亜紀の死後である。

ただの勘ではあるけど、作者はこの本で「大切な人を亡くすこと」を書きたかったんではないかと思う。タイトルの「世界」は主人公にとっての彼女(亜紀)のいる世界といない世界を指していると思っていて、作中はどちらの世界も書かれているのだけど、個人的には後のほう、彼女がいなくなった世界を主人公がどうやって生きるかを書いたところですごく思うところがあった。

私は30年近く生きてきて、まだ葬式にほとんど出たことがなくて(なんならこの10年出てない)、本当に大切な人には会おうと思えば会えるんだけど、そういった人たちとの別れが訪れたときに多分この本を思い出すと思う。人生の節目に思い出せる予感がする本って、あんまりないし、そういう点でこの本は今年一番印象に残った本だった。

長々書いたけど、結局引用したほうが一番魅力が伝わる気がするので、最後に引用します。みんな読んでみてね。

耳のすぐそばで、彼女はしゃべっていた。懐かしい、あのはにかむような声で。やさしい心はどこへ行ったのだろう。アキという一人の人間のなかに包み込まれていた美しいもの、善いもの、繊細なものは、どこへ行ってしまったのだろう。夜の雪原を走る列車のように、明るく光る星の下を、いまも走りつづけているのだろうか。どこへとも行方を定めずに。この世界の基準では測れない方位に沿って。 

 

世界の中心で、愛をさけぶ 小学館文庫

世界の中心で、愛をさけぶ 小学館文庫

 

 

愛がなんだ / 角田光代

いや、結局恋愛小説ばっかり紹介するやんと思われるかもしれないけど、よかったものはよかったのだからしょうがない。今年映画化された作品なんだけど、映画に行くより本読んだほうが早いなと思って読んだ。どう考えても映画に行くほうが早いのだけど、まぁそういう気分だったんだろう。

いわゆる周りが見えなくなっちゃう系恋愛小説で、主人公のテルちゃんが好きな男(マモちゃん:クズ)にとにかく振り回される。マモちゃんからいつ電話が来ても取れるように勤務中でも携帯をずっと触ったり、社内の人間関係を犠牲にしたりして、ついには仕事まで辞めてしまう。そのあたりまでは見てられないんだけど、マモちゃんの好きな女が登場するあたりから、読んでる方ももう開き直ってくる。

主人公は絶対あきらめない。好きな人に好かれなくても、邪険に扱われても、便利屋として扱われても。合理性が吹っ飛んでてこその恋愛感情だし、一般的な論理とかけ離れたところにある感情をどうやって書くのかが恋愛小説の難しさだと思う。ある恋愛小説を読んだとき、まったく共感できず、主人公の行動が理解できずにイライラしてしまったんだけど、「愛がなんだ」は共感できなくても面白く読めてしまった。面白く読めた理由は、多分主人公の行動論理がはっきり示されていることと、主人公の人間性がきちんと書かれているからだと思う。

そういうわけで恋愛小説はちょっと……って思ってる人も一回読んでみてほしい。勉強するもんでもないけど、勉強になるよ。

 

愛がなんだ (角川文庫)

愛がなんだ (角川文庫)

 

 

ゲームの王国 / 小川哲

つい最近読んだんだけど、内容が複雑で紹介できる気がしない……。

舞台はカンボジア、クメールルージュがカンボジアを統治する少し前から始まる。ジャンルは一応SFなんだけど、あまりSF要素は多くない。上巻はクメールルージュ統治前から、クメールルージュが台頭して、カンボジアポルポトのもとで独裁国家になっていく様子が書かれる。

上巻は歴史小説のようで、一体どこまでが事実で、どこからか創作なのかがわからなくなってくる(明らかに史実ではありえない不思議な能力を持った人間も出てくる)。そんななかでも、多分この人が主人公なんだろうなぁって人が二人登場する。辺境の村で育った潔癖症の少年ムイタックと、ポルポトの隠し子と称され嘘を見抜く能力を持つ少女ソリヤ、上巻では二人の育った環境と成長、出会いと別れが書かれている。

下巻はすっぱりと時間が経過し、2003年~2023年のカンボジアが舞台になり、ゲームを作成し、脳科学を研究する学者になったムイタックと、政治家になりカンボジアをよくすることを目指すソリヤが登場する。

社会はルールがあるという点でゲームに似ているんだけど、クメールルージュはルール違反をなくすために、国民から知識を奪い、すべてを管理することによってルール違反をできなくした。そして現代のカンボジアではいまだに政治の世界でも警察などの公務員にも賄賂の文化があり、ルールを変えることができてしまう。これはゲームではあってはならない。

二人の天才はゲームで勝つこと、ルールに規定された中で知力をぶつけることに価値を見出し、歴史に翻弄されながらもそれぞれのゲームの王国を目指した。

 という感じの話なんですけど、え、どう?このあらすじで読みたいって気分になりました?なれないかもしれないって不安があるんだけど、めちゃくちゃ面白いので、読んでほしい……。自分の書評の下手さを恨む……読んでくれ頼む……。

 

ゲームの王国 上 (ハヤカワ文庫JA)

ゲームの王国 上 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)

ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

やがて海へと届く / 彩瀬まる

3月11日の震災後、友人の行方がわからなくなった主人公は、その死が受け入れられずにいる。友人の持ち物を整理すると言い出した友人の恋人や、亡くなった友人の言葉を代弁しようとする友人の母のことを主人公は受け入れられない。

何も言わずに突然いなくなった人に対して、私たちが取れる行動は驚くほど少ない。体を動かして何か解決できるわけじゃないし、ずっと考え続けて、自分のなかでどうにかしないといけない。正解もない問題をずっと考え続けるのはとても辛いけど、多分生きているとこうした問題は山ほど抱えていかないといけないのだと思う。そんな問題を解いたり、解けなかったり、解けた気になったりしながら生きていかないといけない。

 

ちなみに、作者の彩瀬まるさんは東北への旅行中に東日本大震災に遭い、避難所生活も経験されている。そんな彩瀬まるさんの体験を書いた、ルポルタージュも出ているのでそちらもぜひ読んでほしい。読書体験は自分の想像力を補う力添えをするものだと思っているんだけど、本当にあった出来事を書いたこうしたルポルタージュを読むことで自分の想像力がいかに限られたものであるか、わかると思う。

 

やがて海へと届く (講談社文庫)

やがて海へと届く (講談社文庫)

 

 

暗い夜、星を数えて: 3・11被災鉄道からの脱出 (新潮文庫)

暗い夜、星を数えて: 3・11被災鉄道からの脱出 (新潮文庫)

  • 作者:彩瀬 まる
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/02/28
  • メディア: 文庫
 

 

今年中に書き終わらないので後は短文でまとめ

白銀の墟 玄の月 / 小野不由美

 ようやく出た十二国記シリーズ新刊。私の中で驍宗は14年行方不明になっていたのですが、ほんとに続きが読めてよかった……。作りこみがすごすぎて、小野先生への感謝しかない。今からシリーズ読んでも間に合います。社会人になった今、広い部屋と財力を生かして是非シリーズ通して買ってください。

 

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)

  • 作者:小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/10/12
  • メディア: 文庫
 

 

平山夢明さんの作品について

 今年は平山夢明さんの本を5冊くらい読んだ。本当に下品でグロくてむごいので決して他人には勧められない本ばかりなんだけど、怖いもの見たさで読んでしまう。小説に書かれている底辺は決して非現実的なものではなくて、実際にありそうなもので、私たちはそこを見ないように、見なくて良いように生きている。底辺をわざわざ見る必要もないけど、でも見ておいてもいいんじゃないか、そういう理由で読んでいるような気がする。

 

星明かりグラフィクス / 山本和音

今年完結した漫画です。全三巻。埼玉の芸大が舞台なんだけど、才能のある人間とない人間の話で、自分の大学生活と重ねて読んでしまった。才能のあるなしって振り返ってみてわかることもあると思っていて、自分はやっぱり才能がない側の人間なので、そのあがき方、身の振り方に共感を覚えながら読んだ。きれいにまとまっていておすすめの漫画です。

 

 

星明かりグラフィクス 1 (ハルタコミックス)

星明かりグラフィクス 1 (ハルタコミックス)

 

 

来年の目標

なんというか、漫画や本を読む時間が年々短くなってきている。特に漫画は今年はあんまり読まなかった。読まなかった時間は別に使っているわけで、人間関係だったり、ゲームしたり、仕事したり、いろいろなことに消化しているんだけど、読書や漫画は自己形成に大きな影響を与えたものだと思っているので、このまま何かを読む行為から遠ざかっていくのは避けたいなとは思っている。

というわけで来年も色々と手を伸ばして読んでいきたい。目標は今年を超える40冊で!!みなさん、面白い本はどんどん紹介していってください。特にサークルの民は文章がみんなうまいと思っているので書評は大歓迎です、よろしくお願いします。